ぺらぺらのびんたち

2022/09

本作品は、2Dアニメーションの持つ平面の重なりによる空間を、3DCGを用いて三次元の空間に再構成し、一つのシーケンスを持った空間を複数の視点(カメラアングル/カメラワーク)によって複数の画面に切り抜くことで、アニメが持ち得ない空間性を取り入れた動画作品です。  

 セルロイドシートを用いたアニメの制作では、実際の空間に配置し上部から固定したカメラによってコマどり撮影を行っていました。「撮影」と言われる工程では線画が変化することで起こる動きとは別に、背景やセル画の位置を相対的に変化させることで、レイヤーの間の運動を作っていました。また光源を設定することで光を用いた効果、カメラの持つレンズの特性によって作られる効果も加えられました。現在のデジタル化されたアニメの制作ではAdobe After Effectsなどの2Dの編集ソフトを用いてレイヤーによる奥行きと、デジタル処理によるレンズの効果などを模倣して加えられています。fixした映像からは特にアニメの物質感(セル画の厚みやビットマップの持つ質感)や構造を目の当たりにすることなく、ストーリーやキャラクターが享受されてきました。  
いずれもカメラ(画面)を固定し、絵を相対的に移動させることで動きを作り出しているので、常に絵の正面の組み合わせによって画面が構成されています。  

 本作品では、静物画の古典的なモチーフである瓶の群像が一定の動きを持つ空間をカメラが絵の正面からだけではなくレイヤーの奥行きへと移動します。三次元の空間によって、厚みのない平面の像が歪に描写されること、レンズや光源の効果を与えることができます。そうすることで、アニメのレイヤーの構造を顕にしつつ、レンズによるボケ、光源による像の影、像の平面性さえも表現の一部として探求する動画作品を制作することが可能になります。

* アニメ、アニメーションで表記揺れがありますが、この作品並びに瓶のシリーズで大元の興味としては常にアニメにあります。 言及する対象としてアニメと書いています。 アニメは主に商業アニメーションです。